2025年11月9日
ラテラノ教会の献堂 ヨハネ2:13~22  

 「この神殿を壊してみよ。三日で建て直す」

 先週の死者の日に続いて、11月の第2の日曜日は年間主日に代わり、特別な記念の日として祝われます。それはラテラノ教会の献堂です。ラテラノ教会といえばローマの4大バジリカの一つですが、何故この教会の献堂が全教会で記念されるのでしょうか? それは、この聖堂がキリスト教の歴史の中で特別な意味を持つ教会だからです。313年ローマ皇帝コンスタンティヌスは、キリスト教をローマ帝国の一つの公認された宗教として認めたのです。ローマ帝国は地中海一帯に広がる大きな国でした。多民族・多文化・多言語であることを超えて一つの国家であるという点で、人類初のコスモポリタンでした。元来、宗教についても寛容であり、ローマ皇帝への忠誠を表す皇帝の像への礼拝さえ認めれば、その宗教は公認されていました。

 初代教会は皇帝を神聖視せず、尊敬はしても礼拝はしませんでした。皇帝はあくまでも人間に過ぎなかったのです。また、当時の多くの宗教は神像に対して貢物を捧げたり、にぎやかな祭典を行なったりするのが通例で、神殿をもっており、そこでのみ宗教行事を行なっていたのです。キリスト者たちの信仰はこれらの宗教とは異なりました。神殿や像は持たず、祭礼のようなことは行なわず、政治的な秘密結社のように思われ、政府を転覆させることをたくらんで集会をしている連中と思われたのです。長い迫害の時代をへて、ようやくコンスタンティヌス皇帝はキリスト教を認めました。そして、自分の領地を提供し、教会を作るよう援助したのです。こうして、ラテラノ教会は首都ローマと地上のすべての教会の母であると言われるようになりました。

 今日の福音においては、イエス様がエルサレムの神殿を過激な方法で清められ、ご自分と教会の関係を語られています。キリストとわたしたちの結びつき、教会の建物と生きた共同体の関係が語られます。どんなに華麗で壮大な建物を建てたとしても、そこに信仰をもった人々が集い、正しい礼拝を捧げ、本来の祈りで信仰を生きなければ、聖堂は単なる建築物に過ぎないのです。キリストの体、聖霊の神殿となるためには、わたしたちとキリストがともにいること、ともに祈り、ともに働き、ともにわかちあうことが必要です。当時のキリスト教徒について、「彼らがどれほど愛し合っているかを見なさい。彼らはわたしたちの仲間さえ世話をしてくれている」とキリスト教徒でない人々によって指摘されているほどです。これがキリスト教に勝利をもたらした秘訣です。力による勝利ではなく、愛と真実の生き方がローマ帝国にキリスト教を認めさせたのです。

【祈り・わかちあいのヒント】
*教会が共同体であるために必要なことは何でしょうか?